身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
見覚えのある表示が目に入り凛音は思い出した。

たしか、この近くには会社帰りにふたりで訪れたイタリア料理店があるはずだ。

「今からイタリア料理ですか?」

「いや、今日の目的はあの店じゃないんだ」

「そうですか……」

凛音は柊吾に気づかれないようホッと息をついた。

今は治まっているが、いつまたつわりで気分が悪くなるかもしれない。

イタリア料理に限らず外食は控えたいと思っていたのだ。

「柊吾さん、だったら今からどこに行くんですか? できれば家に帰って食べたいんですけど」

「つわりが気になるんだよな。もう少しで家に着くから安心しろ」

「……もう少し?」

凛音は訳がわからず辺りの景色をキョロキョロと見回した。

ここは柊吾のマンションからも凛音の自宅からも離れていてもう少しという表現はあまりにも無理がある。

「柊吾さん、道を間違ってませんか?」

柊吾に限ってそれはないだろうと思いつつ尋ねると、柊吾は例のイタリア料理店に向かって迷いなく車を右折させた。

凛音の視線に柊吾は気づいているはずだが、なにも答えず車を走らせている。

「着いたぞ」

「え?」



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