身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
普段は簡単にハーフアップにまとめている凛音が首元を露わにし、柊吾は「かわいらしいな」と何度も言っていたが、凛音はその言葉を素直に喜べなかった。

ポニーテールの自分が、姉の瑠依によく似ているからだ。

凛音と違って何事にも積極的で明るい性格の瑠依は柊吾と同い年の三十四歳。

凛音より七歳年上だ。

学生の頃は長い髪をよくポニーテールにしていた。

凛音の色白で目鼻立ちがはっきりとしているところや艶のある栗色の髪は瑠依によく似ていて、ふたりとも身長は百六十センチ前後と大して変わらない。

おまけに華奢で手足が長く、顔立ちだけでなく佇まいもそっくりだ。

ポニーテールの自分の姿を見ると、改めてその事実を突きつけられたようで切なくなる。

幼い頃に両親が離婚して瑠依は父親に、凛音は母親に引き取られた。

その後も瑠依は凛音を気にかけ頻繁に凛音に会いに来ては仕事で忙しい母親に代わって面倒を見てくれた。

凛音にとって瑠依は大切な姉でありどれだけ頑張っても追いつけない憧れの女性だ。

そして今、凛音は瑠依の身代わりとして柊吾の側にいる。

凛音はスマホをバッグにしまいながら苦しげに顔をしかめた。

何事も完璧で優秀な瑠依を目標にこれまで頑張ってきたが、一番欲しいものは手に入らない。

瑠依に似ているというだけで柊吾のそばにいられる自分には、どうやっても柊吾のすべてを手に入れることはできないのだ。

柊吾が愛していた瑠依の代わりには、どう頑張ってもなれない。






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