身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
ベッドにうつ伏せになり、上目遣いでにっこり笑う柊吾の言葉に凛音は目を丸くした。

「間に合うようにって……昨夜もあんなに抱き合ったのに……」
 
重い腰に手を当て、凛音は呆れた。

ただでさえ睡眠不足だというのにいっそう強い疲労感を覚える。

「だけど、満足しただろう?」
 
凛音の言葉を聞き流し、柊吾は目を細めた。

そして勢いよく起き上がると、ベッドを降りつかつかと凛音のもとに歩み寄る。

なにも身にまとっていない体を目にし、凛音は慌てて目を逸らせた。

「まあ、ここまでがっつり抱くつもりはなかったんだけど、凛音がかわいくてつい。さ、シャワーを浴びよう」
 
柊吾は凛音の腕を掴むと、そのままバスルームへと向かった。

「柊吾さん、シャワーってもしかして一緒に?」
 
引きずられるように歩きながら、凛音は柊吾の背に声をかける。

これまでにも何度か一緒にシャワーを浴びたことはあるが、明るい中で全身を見せるのは今も慣れていない。

恥ずかしすぎるのだ。

「なに照れてるんだよ。とっくに凛音の全部、見てるのに」

「それとこれとは――」

「はいはい。ぐずぐずしてると遅刻するぞ、社長秘書さん」


 
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