百怪談
その後、僕はおばあちゃんの家の布団の中で目を覚ましましたが、あのときの確かな記憶がありません。



僕はどうやって助かったのか、僕はどうやってここへ来たのか、そんなことが僕の記憶からスッポリと抜け落ちているのです。



でも僕はあの川で僕の足を引っ張っていた男の子顔だけは、今でも鮮明に覚えています。



そして、なぜあの子があんなに苦しそうな顔をしながら、僕に助けを求めようとしていたのかを今でも考えるときがあるのです。



きっとあの子は春樹君が僕に教えてくれた台風の災害で死んでしまった男の子だったのではないだろうか?



突然死してしまったあの子は僕に何かを伝えたかったのではないだろうか?



そう考えるとつじつまが合うような気がするのです。



僕はあの夏の日の恐怖体験の後、あの川には二度と近寄るまいと心に誓っているのです。
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