最低狩り
最低狩り

花奈サイド


「〇〇県☓☓市で、火事がありました。火は消し止められ、中からは身元不明の男性の遺体が発見されました。警察は出火原因を捜査中で――」

ある一軒家の一室、アナウンサーの感情の無い声が響く。

「ふふっ、うまく殺れたみたいね、松谷くん――いや、もう真奈ちゃんかな?」

栗色の髪に話しかける。

その栗色の髪が振り向くと同時に、黒髪がはらりと落ちた。

頭から取ったかつらをひらひらさせながらら、ニヤリと笑う少女。

――やっぱり、似ている。

私は懐かしさに目を細めた。

「そうですね。お母さんと、明の恨みを晴らせた」

パシン、とハイタッチをする。

真奈は、松谷の変装をしていたのだ。

晴れやかな、清々しい表情をしている少女は、情報収集をしている際に出会った。

私は、伊達八蔔と美奈の娘であると、自分から名乗り出てきたのだ。

そのときの真奈の話によると、真奈も家庭内暴力を疑っていたのだという。

よく近所から、苦情がきて、原因が分からず困っていると。

だが、真奈にはもっと大きな恨みがあった。

真奈の彼氏が、殺されていたのだ。

真奈の彼氏の死因は、アレルギー性喘息。

それを発症した原因が、八蔔にあったのだ。

松谷は、八蔔の教え子だった。

八蔔は、松谷に一人で、埃だらけの、ハウスダストまみれの体育倉庫を掃除させたのだ。

それで、松谷は喘息の発作で死んだ。

松谷の口癖は、「自分が行ったことは、死ぬまで纏わりつくからね」

松谷は、きっといい意味で使っていたのだろうが、あの場ではかなりの嫌味になっただろう。

真奈は、それを思い出させるためにわざわざ松谷の姿で実の父親を殺した。

全く、狂った親子だ。

私ができたことといえば、伊達家の名前を使って八蔔を出勤停止にしたことくらいだ。
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