シオン
夜、自室にいると、視界が狭まった。 意識が途切れた後、目が覚めると。

視点が低い気がする。まさかと思い自分の手を確認すると、そこには白いふさふさした毛が生えた猫の手があった。やはり、猫になっていた。ああ。やっぱり駄目だったか。

私は恋に落ちた。彼から離れなくてはいけない。嫌だな。無理だよ。


「発症」を抑えるための「薬」として、私は本を読む。この体で本をめくるのは難しいが頑張るしかない。

過去に、本に精神が傾くことによって治まるとか治まらないとか言われたから読むしかない。本は好きだから、別にいいけど。


私は派手なグループでもなければそもそもグループというグループに属していない。
だから、暇な時、休み時間は常に本を読んでいるといっても過言ではないくらい、本の世界に入っている。

そうすれば「発症」も抑えられるし、楽しいし、時間も潰れるし、一石三鳥だ。


昨日、私は夢をみた。夢としては正夢になりそうな最悪な夢。
猫になったまま、戻れなくなる夢。

彼と仲良くなり、遊んでいた時。不意に胸の奥から言葉が口をついて出た。「好き」と。
動揺して聞き返す彼と、走り出す私。走っていると意識が途切れる。そんな夢。


放課後、教室に残って本を読んでいたらうたた寝をしてしまったようだ。
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