カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました

「でもそれ、わかる気がするな」

奏音さんも私と同じようにビールを手に取った。

「相手に嫌われたくないから顔色伺って頑張って。でも結局疲れちゃって、こんなはずじゃなかったって後悔する。それなら始めから素を見せられる相手の方が長い目で見たらいいのかもしれないわ」
「今の彼氏さんは?」

聞くと奏音さんは思い出すように視線を斜め上に向けてからニコッと満面の笑みを浮かべた。

「幸せそうでなによりです」

ご馳走さま、と言うように両手を合わせると奏音さんは首を横に振った。

「ほんと咲ちゃんのおかげ。今度彼を紹介するね。そうだ、今度推し活のイベントに行くんだけど一緒に行く?」

ふたりのデートの場所が推し活のイベントというのに少し驚いたけど、それだけ奏音さんは彼氏に素を見せ、彼は奏音さんに寄り添っているのだと知れて、愛されている奏音さんを羨ましく思った。

「私も私の趣味に付き合ってくれる人と出会えたら幸せになれるんですかね?」
「それなら服部さんがいいんじゃない?それか和津兄」
「かづにい?」

突然出てきた名前に、思い当たるまで少しだけ時間がかかってしまった。

「月城和津」

奏音さんに言われて名前と顔が一致した。

「月城さんって写真とかカメラに興味があるんですか?」
「そうよ。いつからか撮らなくなっちゃったけど、カメラが趣味なの。だから趣味が同じ者同士、話も気も合うと思う!」

鼻の穴を膨らませて興奮気味に断言する奏音さん。

でも上司であり、住む世界の違いそうな月城さんとは自然体で向き合える気がしない。

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