カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
撮影

服部くんが用意した白のワンピースに着替えてから撮影はスタートした。

「スタイルがいいからなに着ても似合いますね」

服部くんの言う通り、白シャツにジーンズというシンプルかつラフな服装を品よく着こなすのだからさすがだ。

服部くん御用達の人里離れた公園でなければ本物のモデルか何かと勘違いされ、人が集まってきたに違いない。
他人目につかない場所であって本当に良かったと心から思う。

「いいところだな」

月城さんが新緑の雑木林を見ながら言う。

「少し歩いたところには広場もあるのであとでそちらに行きましょう」

服部くんは私たちよりも先に来て下見をしていた。
今は光の方角を確かめ、カメラの設定を変えている。
興味のある私は服部くんの背後に回り、カメラの設定画面を覗いていた。

「加藤はあっち」

服部くんに言われて、月城さんの隣に立つ。

「それで?まずはどうしたらいいんだ?」

月城さんが服部くんに聞いた。

「まずは手を繋いでこっちに歩いてきてください」

今いる場所は並木道のようになっている。
手を繋いで歩くという構図にはベストだと思うけど。
これから恋人としての撮影が始まるのだと思ったら一気に緊張してきた。

「はい」

月城さんに差し出された手が取れない。

「加藤〜!手、繋いで」

カメラを構えている服部くんが急かす。

「ちょっと待って!緊張で震えるの!」

手を擦り合わせながら言うと月城さんは私の頭にそっと手を乗せた。
反射的に見上げると月城さんはニコッと微笑んだ。

「大丈夫だ。楽しめばいい」
「そんな余裕ないですよ」

愚痴をこぼすと月城さんは少し考えるそぶりを見せてから言った。

「やっぱり事前にキスをしておいた方がよかったか?」
「そういう問題でもないですっ」

少し声を荒げると月城さんは声を出して笑った。

「いつもの調子が戻ったな」

月城さんは言いながらさりげなく私の手を取り歩き出した。
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