37℃のグラビティ
「……そうだ」


アタシは返さなければいけないと思っていた屋上のスペアーキーの事をふと思い出し、鞄の中から取り出すと、新海へ差し出した。


「これ、返すね」


「これからも、お前が使っていいよ」


「え? でも……」


「俺が留学から帰って、また会う様な事があったら、そん時返して」


それは遠回しに「あげるよ」って言ってるんだと思ったけれど……


そんな約束にもならない約束が、今のアタシにはとても嬉しくて、そしてとても寂しかった。


だってもうそれ以外、新海とアタシを繋ぐものは、何ひとつないから……


ごめんね……でも、ありがとう……でもなくて。


さよなら……でも、またね……でもない。


それがアタシの恋の結末――
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