37℃のグラビティ
エレベーターの前。


下向きの矢印ボタンへと、伸ばした人差し指を止める。


マンションに屋上があった事を不意に思い出したアタシは、まだ一度も行った事のない屋上へと行ってみる事にした。


あの日(アーヤとの初対面)以来、(のぼ)る事のなかった階段を使って、15階を通り過ぎ、やって来た16階。


屋上へと続く扉は、見るからに重たそうで、施錠がしてある様にも見える。


冷たいドアノブに、駄目元で手をかけて回してみると、ギィィィという音を立てながら、その扉が開いた。


なんだ鍵なんてかかってないじゃん。


気を良くしたアタシは、その屋上へと出てみた。
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