稲荷くんのいたずら
20歳稲荷飛鳥、参上。



「松山さん、松山さん。」


暖かいものが私の頬をなでた。



「ん…?」


眠い目を擦りながら起き上がる。


「こんにちは、松山さん。」


ふわふわしたものが半袖パジャマから出た腕をかすめた。


だんだんと視界と意識がはっきりしてくる。



声の主をはっきり捉えたとき、私は思わず声を上げた。


「いっ稲荷くん!??!!?」

「こんにちは。」


私の驚き顔に微笑んで返すのは、

稲荷くんによく似た人物だった。


いや、人なのか?

その人にはキツネのような尻尾がたくさん、
そして浴衣のような和服を着ていた。


そう、妖狐のような姿だった。


「え?え?なんで?稲荷、くん、だよね??」

「…まあそうだね。この尻尾とかはちょっと訳ありなんだけど。」


え?稲荷くん??
訳ありの尻尾?


まさか…まさかまさか…


「稲荷くん…妖怪…??」

「えぇ!?違うよ!」



いや、じゃあその尻尾はなに!?

耳だって生えてるし!!


耳4つあるし!!!



「いや、聞いて??この姿は、ちょっと変化してるだけで。もともとは…ホラ!」


そう言ってボフンと音を立てて煙に包まれたかと思うと、
目の前には黒いシャツにジーンズを履いた背の高い人間の稲荷くんがいた。


「えええ……。」

私は驚きすぎてジリジリと後ろへ下がる。


稲荷くんって…人間ならざるものだったの…?



「こっちがホントの姿。俺、稲荷飛鳥はちゃんと人間だよ。
そっちの稲荷飛鳥も人間でしょ?」

「え、あ、そっすね……」


たしかに私の知る稲荷くんは人間ですけど…。
じゃああなた誰なのよ!!

てか、さっき俺、稲荷飛鳥デスヨ発言してたね!!?


「えっと…なんで俺が君の夢に出てるかっていうと…「ちょ〜っと待って!!」


勝手に話を進めようとした稲荷飛鳥(仮)にタンマをかける。


「あなた、誰?」


「え、稲荷飛鳥。」


「でも私の知ってる稲荷くんは、中学生だよ?」


「あぁ、俺は20歳稲荷飛鳥。」


「あ、ふーん。そっかぁ。」


へえ…育った稲荷くんってことね…って



「えええええええええええええええええええ!?!??!?!?!?!!??!!」
< 5 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop