稲荷くんのいたずら
「…意外と、話しやすかったな。」
その日の帰り道。
そんなことをぼやきながら、住宅街を歩く。
いつもの公園では、いつものように小学生が大きな声を出しながら遊んでいる。
そこを通り過ぎると、お稲荷さんがポツンと立っている。
私はそのお稲荷さんを見るたび、
名字の似ている稲荷くんを思い出して、何故か拝んで行くのが日課になった。
パンッパンッと乾いた音を立てて手を合わせる。
(今日初めて稲荷くんと会話しました。1年もかかりました。)
そして、まるで謝るかのように一礼し、その場を去った。
サーーー〜〜〜………
少し強めの風が後ろから吹いた。
なんとなく後ろを振り返る。
そこには西日に照らされ、桜の花びらが風で散り落ちているお稲荷さんがあった。