8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
「今の時点では、何とも言えません。ただ、気になることがあるとすれば、ミルズ侯爵令嬢がカクテルをとったときの女性の一団の中には、ジェマ侯爵令嬢もいたということですね」

「ジェマ嬢がやったかもしれないということか?」

「少なくとも、フィオナ様が目障りだと思っているのは、ジェマ様でしょう」

 ロジャーが言えば、オスニエルも頷く。

「だが、彼女が入れたという証拠はないな」

「そうですね。決定的な場面を見たものはいません」

 ロジャーとオスニエルが顔を見合わせる。

「……決め手に欠けるな」

 できることは、ジェマが毒物を所持しているか確認するくらいだが、身分ある人物の身体検査をするのは、あの場にいた人間だけでは無理だった。今となっては、証拠はすべて捨ててしまっているだろう。

「とにかく、フィオナに毒物が使われたということは間違いないんだな?」

「そうです。毒物が入手できそうなルートも限られておりましょう。闇市周辺に手を回して、出入りしている貴族がいないか確認しましょうか」

「そうだな」

 ふたりが動きだそうとしたとき、国王からの使者がやってきた。

「オスニエル様、陛下がお呼びです」

「父上が?」

 オスニエルは、怪訝そうに眉を寄せ、ロジャーに調べるのを託して、とりあえず父親のもとに向かった。


「父上、何の御用でしょう」

 毒が使われたというならば、一刻を争う。イライラしながら、オスニエルは父の部屋を訪れた。
 対する国王は酷く不満そうだ。

「何の、ではない。お前、なぜ昨日は戻ってこなかった」

「なぜって。妻が病床にいるのに、俺が呑気に笑って踊っていられるわけがないでしょう」

 真剣に語るオスニエルを、国王は怪訝そうに二度見する。

「一体どうしたというのだ。あの娘を側妃に迎えるのを嫌がっていたのはお前ではなかったのか」

「今は感謝しておりますよ。父上。フィオナは他に類を見ない稀有な姫です」

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