8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
 俺は再びソファに乗り、顎をフィオナの膝にのせる。

『フィオナ、ここがかゆい。ブラッシングしてくれ』
「そうなの? 虫が付いたとかじゃないわよね。ポリー、ブラシをとってきてくれる?」
「はいはい! ドルフ様、私がブラッシングしましょうか?」
『フィオナでいい』

 ポリーがしょげた顔をしたので、少しだけ罪悪感を覚えたが、ここは毅然としておく。
 悪いな、ポリー。今日はオスニエルに、フィオナが誰のものか分からせてやらねばならんのだ。
 気持ちよくブラッシングを受けながら、ちらりとオスニエルを見る。
 どうだ。お前はこんなことされないだろう、オスニエル。
 我ながら大人げないが、得意げに見せびらかすことにする。案の定オスニエルはわかりやすくムッとした。

「フィオナ、俺の茶はまだか」
「ごめんなさい。ポリー、オスニエル様にお茶を入れてくれる?」
「俺が優先じゃないのか!」

 ざまあみろ。フィオナは俺が長らくペットとして可愛がっていた娘だぞ。ぽっと出のお前になんかに、そう簡単にはやれないんだからな!
 ノックの音がして、俺は慌てて子犬の姿に戻る。

「フィオナ様、失礼いたします」
「どうしたの?」
「ロジャー様がいらしていまして、オスニエル様に政務にお戻りくださいとお伝えするよう言われました」
「もう時間か」

 オスニエルは腰に付けた懐中時計を確認し、ため息をつく。
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