8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
 フィオナが王城に来て、三日が経つ。

 ポリーはとにかくドルフが気に入っているらしく、ドルフの好きなものをやたらに聞いて、いろいろなものを持ってきてくれる。
 彼女が言うには、父親が商売をしているので、いろいろな伝手があるのだそうだ。

「ドルフ様が喜んでくれるなら、なんでも調達しますよ!」

「ふふ……ありがとう」

 当初、ポリーに対しては警戒心を持っていたフィオナだが、ドルフを間に挟んだことで、すっかり気が緩んでしまった。
 一応、弱みになるようなことは言わないようにと心がけてはいるが、楽しくてついつい話が弾んでしまう。
 フィオナの幼馴染みは男の子ばかりだったので、女の子の友達がいたらこんな感じだったのだろうかとも思うのだ。

 婚約者であるオスニエルとは、初日に顔を合わせたきりだ。あのあと、フィオナの輿入れ道具は無事に見つかり、荷物を運び入れてもらった。
 たくさん持ってきた綺麗な紐を使って、フィオナは早速紐編みを楽しんでいる。

「フィオナ様、お上手ですね」

 ポリーの朗らかな声が聞こえてくる。

「もしかして、ドルフ様のお花の首輪も、フィオナ様が作ったんですか?」

「ええ。そうよ。意外と簡単なの。ポリーにも教えてあげましょうか」

「はい、ぜひ」

 そこから、フィオナによる紐編み教室が始まった。しかし、ポリーは侍女などという職に就いていながら存外に不器用だった。

「あれぇ、絡まってしまいました」

「おかしいわね。そんなに難しくはないんだけど」

「私には無理そうです。フィオナ様、凄いですねぇ」

 そんな風に褒められるとなんだかとてもこそばゆい。

(うん。今までの人生に比べても、ずいぶん楽しい。これで十分だわ)

 このまま夫に愛されなくても、侍女やドルフが側にいてくれれば、寂しくはない。
 今はただ、生きのびることが望みだ。フィオナがここで生きてさえいれば、オズボーン王国とブライト王国の間の同盟は成り立つ。王太子だって無理にブライト王国に攻め込む理由がなくなる。
 もう二度と、国を滅ぼした王女などと言われたくはない。死んでしまってから何を言われても自分の身に傷はつかないけれど、王女としての矜持くらいは持ち合わせているのだ。
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