8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
 挑戦的な声に、オスニエルのいら立ちは止まらない。予想と違いすぎる。粗末に扱われ、さめざめと泣いている姿を想像していたのに。

「婚儀は明後日だが、先に言っておくことがある」

「なんでしょう」

「俺はお前を妻として扱う気はない。いいか、お前は人質のようなものだ。この宮での自由は保障してやるが、俺からの寵は期待するな」

 オスニエルは、フィオナの傷ついた顔が見たかった。たおやかな彼女が涙を浮かべれば、それは芸術品のように美しいのではないかと思えたのだ。

 だが予想に反し、フィオナはホッとしたようにほほ笑んだ。

「それは大変結構でございます。私も、この結婚に愛など期待してはおりませんの。いっそ最初からそういった行為は無しにいたしましょう? どうせオスニエル様は、いずれ正妃をお召しになるのでしょう? であればお世継ぎは正妃様にお任せできますしね」

 フィオナはにっこり笑ってそう言うと、「では」と頭を下げた。その後をペットの犬が尻尾を振りながらついていく。
 すっかり姿が見えなくなってから、オスニエルは茫然とつぶやいた。

「なんだ、あの女は」

「前評判とは違い、はっきり物を言う女性のようですね」

「……そうだな」

 フィオナの態度は予想外だ。もっと従順でおとなしい女だと思っていた。あのペットに向けるような無邪気な笑顔も、オスニエルに向けた毅然とした表情も、あのか弱そうな姫がするとは、想像もしていなかったものだ。

「気に入らない」

 胸がモヤモヤとし、落ち着かないオスニエルは、その感情に不快という名を付けた。
< 44 / 158 >

この作品をシェア

pagetop