8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
 フィオナ妃が主なる貴族令嬢にお茶会の招待状を出したという噂は、あっという間に広まった。
 ブライト王国からの人質同然の側妃の社交的な行動に、彼女らの父親や夫にあたる貴族たちは、動向を決めかねている。

 そんな中、一回目のお茶会は開かれた。参加者はそう多くはない。やがて正妃になるであろうジェマ侯爵令嬢の怒りを買わないようにと、静観しているものがほとんどだったからだ。

 そのため、茶会の主な参加者はポリーの友人である男爵令嬢や子爵令嬢たちだった。
 彼女たちの父親は侯爵家とのつながりが薄く、あわよくば側妃を中心とした派閥を作ろうと、積極的に娘たちを送り出したのだ。

(意図したわけじゃなかったけれど、味方になりうる家門の判別がついたわね)

 フィオナはひそかにほくそ笑む。
 今日は、顔つなぎと髪飾りの紹介だけだ。これで食いついて来たら、ワークショップにという形に持っていきたいと思っている。

「フィオナ様の髪飾り、素敵ですわね。ドレスにもこんな飾りがついていたと御式に参加されたご令嬢の噂で聞きました。いったいどの仕立て師の作品なんですの?」

「あら、お褒め頂き光栄ですわ。実は、……恥ずかしながら自分で作ったんですのよ」

 フィオナが扇で口元を隠しつつほほ笑むと、他の令嬢たちが歓声を上げた。

「ご自分で作れるのですか?」

「フィオナ様はとても器用なんですのね」

「実は簡単にできるのです。良かったら、皆さまにもお教えしますわね。次のお茶会のときにでもぜひ」

「まあ、うれしい」

 この返答が社交辞令か本気か判断がつかず、フィオナがあいまいに笑っていると、ドルフが膝の上に登ってくる。かわいい子犬姿のドルフは、あざとくあくびまで見せて、フィオナの膝の上で丸くなった。
 途端に、令嬢たちの視線がドルフに集中する。

「かわいらしいですわね。しかもフィオナ様の髪飾りとお揃いの首輪をつけていますわ」

「ええ、そうなの。自分で作ると、ペットとのお揃いも楽しめるし、紐の色も自分で好きに決められるんですのよ」

「サンダース商会で扱っていると聞きました。そちらで買ったのではなくて?」

 市井をよく知る令嬢が口を挟むと、ポリーが割って入った。

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