8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
 ホッとしたように笑ったフィオナは、とてもかわいらしかった。
 さて帰ろうと踵を返そうとしたとき、彼女はドルフを抱き上げたのだ。

『ありがとう、ワンちゃん。一緒においで、ペットになってよ』

 なんとフィオナは、ドルフをペットとして飼うことにしたらしい。冗談じゃない。こっちは天下の聖獣だ。人間なんぞの庇護になどなるものか。

 けれども、彼女はドルフを腕にご機嫌に歩き出した。いま振り払って森に行っては、せっかく笑うようになったのに、また泣いてしまうかもしれない。そう思うと、ドルフもあまり強気には出れなかった。

(まあいい。数年くらいなら、こいつにつき合ってやっても良かろう。そう、俺のペットにしてやるのだ)

 こうして、ドルフはフィオナと一緒に暮らすようになった。

 彼女が十三になった年、フィオナが加護を得るために山に入ったとき、誰からも加護を得られなかったのは、ドルフのにおいがついているからだ。現在ルングレン山で最も能力が高いの聖獣は、フィオナの祖父を守っていたドルフの父だが、彼はもう他の誰の守護もしないと決めている。次に強いのがドルフだ。彼を押しのけてまで、フィオナの加護を申し出られる聖獣はいない。

(だが俺は加護を与えたわけじゃない。フィオナは俺が一番というわけじゃないからな)

 フィオナは、ドルフをペットとして可愛がっていたがそれだけだ。最初の生では、結婚が決まり、彼女はあっさりとドルフを手放した。フィオナが連れて行こうとしなければ、一緒に行く義理はない。
 フィオナの失敗した人生を眺めながら、ドルフは何度も時を巻き戻した。

(一体いつになったら、こいつは俺を求めるのか)

 なかば、やけになって時を巻き戻し続けた結果、ようやく八回目で、フィオナはドルフを選んだ。ドルフは胸のつかえが少し落ちた気がした。何のことはない。ドルフはずっと、フィオナに選んでほしかったのである。

(国を守る気はない。だが、お前は守ってやってもいい)

 ドルフは眠るフィオナの額をぺろりと舐めた。

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