図書室は正しく使いましょう! ~文学少女と不貞男子は恋に堕ちません?~

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「おはようございます。皆さんの担任になりました、佐藤 美波です。よろしくおねがいします」

「よろしくおねがいしまーす」

佐藤美波 と黒板に大きく書かれた。

保護者が背後にずらりと並んでいる。
私の親はいない。

でも、気にしない。
もう、慣れたことでもあるし。

ふと、窓の外を見る。

満開の桜。
今年は遅咲きだったから、まだ花びらが残っている。

桜が散ってしまうのはなんだか、悲しい。
桜の幹も悲しいのか、蕾〜満開、そして葉桜、落葉、全部、ちがう香りがする。
鼻のあるなしとかそう言うのじゃなくて、なんか、悲しい香りがするの。

担任になった、佐藤美波先生からは、やる気に満ち溢れた香りがする。

新任かな、初々しい感じもする。

外の桜の幹の下。
身覚えるのある男の子がいた。
さっき、図書室で見かけた男の子だ。

図書室、不正利用男子。

図書室であんな事するなんて、許せない……
いくら先輩でも、いくら、イケメンでも、図書室は、読書を楽しむ神聖な場所なんだから……

本への冒涜よ。そんなの。

「では、今日は入学式と書類を配るだけでお終いです。明日からはレクリエーションなどが始まりますので! 楽しみにしていてね」

にこり。

先生は優しく笑った。

。:°ஐ♡*


書類を貰ったらさようならだった。

図書室、寄っていいのかな。
でも、また、あの先輩がいたらやだなぁ….…
先輩のお連れ様とも気不味いし。

誰か、誘っちゃえばいいのか!
本好きそうな子いないかな。

そう思い、辺りを見渡す。
皆んな、お父さんがお母さん、或いは両方と一緒でなんだか、話しかけ難い。

話しかけて、私の親に挨拶してくれようとしても、いないから。
さっきみたいな感じになってしまうのがなんだか申し訳ない。

いくら、私が気にしてなくても、私は世間様からみたら『可哀想なコドモ』なのだから。

そんな事ないのになぁ。
私の気持ちだけじゃなく、じーちゃんとばーちゃんと、3人で仲良く楽しく暮らしているのに、その暮らしすら否定された気持ちになる。

しょうがない。

毎回自分に言い聞かせてる。

「よ、お前、帰んねーの?」

さっき、入学式で隣に座っていた男の子に声をかけられた。

「卓くん!」

「カオルで良いのかな?」

「いいよ?」

「俺も、タクミで良いよ」

「ん、分かった。あ、そうだ! 図書室寄りたいんだけど……付き合ってくれない?」

「図書室? うーん、良いよ、別に」

あれ、なんか、ちょっと嫌そう。

「図書室……本、嫌い?」

恐る恐る伺う。
もし、そうだったら、スグルとは仲良くなれないかもしれない。

「いや? 割と好きだよ、読書は。でも、ここの図書室には……」

図書室には?

「いや、いいや、行こうぜ?」

そう言って、彼は歩き出した。

「お母さんは? 良いの?」

「おう、先帰ってもらった」

「そなんだ。大丈夫?」

「大丈夫だよ」

男の子とお母さんってそんなもんなのかな?

。:°ஐ♡*

図書室についた。
やっぱり、好きだなぁ、この雰囲気。
吹き抜けの天井。
そこが窓になってるから太陽光が差し込んで気持ちが良い。

スグルは辺りをキョロキョロと見渡して、ふぅ。と一安心した様な表情を見せた。
なんだろう?

「ん、大丈夫。取り敢えず、今は」

「ん?」

「こっちの話。カオルは心配するな」

スグルってよく見るとなかなかのイケメン。
今朝の先輩と何だか少しだけ香りが似てる。

あれ?
図書カードで見た名前って、周防至だった気がする。

そう思い出し、その本を手に取る。
やはり、周防至と書かれている。

!!!

今朝会ったイケメン不貞先輩の香りが微かに残っている。
そして、スグルの香りも少し.…

「いたるぅ! ホントに大丈夫なの? 今朝は朱美とここでシたんでしょ? その最中に誰か来たとか?」

「大丈夫。今朝はシてないし。誰も来ないって。今日は1年坊の入学式だし」

そう言って、私たちがいる机より入り口側の本棚にもたれかかり、事を始めようとしていた。

「スグル、あれって、お兄さん?」

「なんでお前が知ってんだよ」

だから来たくなかったんだ。

スグルはそう小声で呟いた。

「ごめんね」

「お前は別に悪くないだろ」

スグル、意外と優しい。
フォロー? してくれた。

「どうしよ、暫く帰れない感じ?」

「なんで、俺らが我慢して兄貴達の情事に付き合わなきゃいけない訳? そんなの正面突発だよ」

フッと不敵な笑みを浮かべたスグル。

大きな音を立てて椅子を引く。

「ちょっと、至! 誰かいるじゃない!」

女の子の声は慌てた様子でガサガサと音がする。

「行くぞ」

そう言って、私はスグルに手を引かれて正面突破する羽目に!!
また、女の子の恨みを買うじゃない!
どうしてくれるのよお!

「よ、スグ。元気?」

「兄貴の所為でテンションだだ下がり」

クスッと口元を緩めて不貞先輩は笑う。

「お前もここでヤる気だった訳? ここは俺ンだからダメだぜ。それとも兄弟+αのプレイがご希望で?」

「誰がヤるかよ、こんな所で」

いくぞ、

そう、せっつかれるけど、

「なに? 赤くなったんの。可愛いじゃん。お前、スグに惚れてんの?」

「ち、ち、ち、違いますううう!! スグルとは今日会ったばっかりで! 全然まだ知らないので、好きとかそんなんじゃないですう!」

「あたふたしちゃってかわいー! ねぇ、俺と遊ぼうよ。久しぶりに処女抱きたい」

「ちょ、至!? 私は!?!」

「煩い。少し黙っててくれない?」

ちょっと、ちょっと。
女の子顔真っ赤にして、怒ってますけど。
私は貴方に1mmも興味ないんで、関わらないで下さい。
女の子のお相手をしてあげて下さい。
図書室以外の場所で。

「ねぇねぇ、名前なんての?」

「おい、兄貴! カオル困ってんだろ。辞めろよ」

「へぇ。カオルちゃんって言うんだ。良いね。苗字は? 字面は?」

この、不貞野郎、グイグイくるな。
ご遠慮願いたい。

「ちょっと、あんた! 至に少し構ってもらったからって勘違いしないでよね。何十番目かの女になれるだけなんだから!」

「は? 何十番目の女? あんた何人女いんのよ! この不貞野郎! 図書室で不貞行為すんな! バカ! 先輩、安心して下さい。私こんな不貞野郎に1mmも興味ないんで! 靡かないんで! 安心して下さい! で、不貞野郎先輩、私は貴方に興味が全くありませんので、この先一切合切関わらないで下さい!」

ふぐっ

不貞野郎が吹き出した。

「お前、面白すぎ。絶対抱く。決めた。お前の事落とす。覚悟しとけよ」

そう言って、乱暴に私を抱き寄せておでこにキスをした。

「ちょ、何すんのよ! バカ!」

女の先輩は目をぱちくりさせている。
さっきの剣幕は何処へやら、状況をうまく把握できてない様だ。

私もできてない。
この、不貞野郎。私のおでこに何すんねん!

「絶対、お前から今度は口にキスさせてやるから。覚悟しとけよ」

「誰がするか! バーカ! スグル? いこ!」

「お、おう……」

「スグ、今回こそ俺が貰うからな? 覚悟しとけよ」

不貞野郎がスグルに何か言ってるが知らない。
怒った! イライラする! なんなのあいつ……!
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