My dear prince~初恋の幼馴染or憧れのアイドル~
お別れだと思うと苦しくて、悲しくて、泣いてしまう渚の肩に、そっと手を回した涼は、呟くように静かに言った。


「俺、紫音に言われたんだ。
射的の店で、渚を賭けて勝負しないか?って」


「……わ……私を賭けて……?紫音も私の事が好きって……?」


「そうなんじゃねぇか?俺は渚に嫌われるような意地悪ばかり言ってきたから、紫音に射的で勝てても、渚に好きになってもらえる資格なんてないのかな?って思ったから。
でも紫音に負けないように頑張りたいって思ってる」


そんな言葉に涙が止まらない渚は、涼の胸に顔を埋めて泣き咽ぶ。


「ごめんね……ヒック……ごめん……」


涼が意地悪なんかじゃないって、誰よりもわかっていた……


次々に人を好きになったりしない事も知っていたはず……


こうして寄り添ってくれる優しい性格ってことも、私が一番知っていたのに……


渚がこれまでの涼の事を思い出しても、もう動き出した時計は止まらない。



私だって好きだった。


何度も言おうか?と迷ったが、紫音に持って行かれた心は、簡単に戻っては来ない。


歯車の狂ったタイミング。

すれ違い。

紫音に取られたくないと、慌てた涼の告白は、間の悪い告白となってしまった。





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