若女将の見初められ婚
「キャー!!志乃ちゃんやね!
まぁ!噂通りの別嬪(べっぴん)さんや。いや、噂以上やな。ホンマにお嫁さんにきてくれるの?」
突然飛びついてきた人にガクンガクンと揺らされ、私はなされるがままだ。
これは、何事?!
「ちょっ、何すんねん!」
しの君が慌てて引き剥がしてくれた。
「あら、ごめんごめん。思ってた以上に別嬪さんやったから、つい興奮してしもた」
飛びついてきた人物がすすっと離れる。
「いらっしゃい、志乃ちゃん。仁の母の登代子です。ホホホ」
取って付けたように楚々と言うのは、まさかの女将さんであった。
女将さん?!これは予想外…
「橘志乃と申します。よろしくお願いいたします」
想像とはあまりにも違う初対面だったが、挨拶だけはちゃんとせねばと、深々と頭を下げる。
「キャー!やっぱりいい子やんか。嬉しいっ」
またも飛びついてきたかと思うと、ギュッと抱きしめられる。
く、苦しい…
「騒がしいな。何事や」
旦那さんが奥から出てきた。
想定外の対面が続いて、動揺するしかない。
「た、橘志乃と申します。よろしくお願いいたします」
抱きつかれたまま、何とか声を絞り出した。
「母さん、落ち着け。志乃ちゃん、死んでまうやろ」
しの君が額に手をあて、天井を仰いだ。
「だって嬉しいねんもん」
ペロッと舌を出すと、さぁ行きましょ、行きましょと女将さんは私を奥へと連れて行く
これは…。すごい。
「な?思ってたのとは違うやろ?」
しの君が苦笑いをしながら囁くので、引きずられながらコクコクと頷いた。