若女将の見初められ婚
お店の奥には、和室が二部屋と大きなダイニングテーブルがあった。
和室は着物の商談で使い、テーブルはお客様にお茶を振る舞うのに使うのだろう。
落ち着いた店内は、老舗に相応しい趣があった。
テーブルに案内されて、しの君の隣に座る。向かいには、ニコニコ顔の旦那さんと女将さんだ。
そこへ、着物姿の女性がお茶を運んできてくれた。
「篠原さん、紹介しとくわ。
こちら、俺のお嫁さんになってくれる橘志乃さん」
「橘志乃と申します。よろしくお願いいたします」
慌てて立ち上がり、頭を下げた。
「篠原綾子です。『いわくら』で30年働いております。よろしくお願いいたします」
ふくふくとした笑顔の篠原さんは、女将さんと同じ年くらいの優しそうな人だ。
「篠原さん、30年にもなるんか!何年働いてるとか考えたことなかったけど」
しの君が驚きの声をあげた。
「そうです。仁さんのアレもコレも全て知っておりますので、仁さんと喧嘩したときは、私のところに言いつけに来てくださいね。
弱みなんて山ほど握ってますから」
篠原さんはにっこりと微笑みかけてくれた。
なんと頼もしい!
ぜひともお願いします。
「恐っ!アレもコレもって何やねん…」
しの君が怯えていた。