LOVEPAIN⑥
私は言った手前、本当にトイレへと行き、
手を洗いハンカチで手をふきながら、
トイレ近くの通路の前で立っていた。


「あ、広子ちゃんお疲れさま」


向こうから、木原さんがやって来る。


今日、Mioちゃんからの打ち明け話を聞いてから、
この人はMioちゃんの彼氏なのだとそう思って見てしまう。


よく見るとけっこうイケメンで、爽やか。



「ねぇ…」


そう言って近付いて来る姿に、なんとも言えない嫌な予感がした。


頭に警笛が鳴る。


「ねぇ、広子ちゃんLINEとかしてないんだよね。
さっきガラケー使ってたの見たから。
今時、ガラケーなの?」


「あー、はい」


私の感じた嫌な予感は、思い過ごしだったのか。


てっきり、口説かれるのか?と構えたけど、
ただ単に、私がまだガラケー使っている事に対する事だったんだ。


それはそれで、ちょっと嫌な感じだけど。


私が使っているのは、正確には、ガラケーではなくガラホらしいのだけど。


「不便じゃない?」


「まー、別に」


WDSに移籍した辺りから、成瀬に仕事用にとタブレットも渡されているけど、

それはブログを書く時に使うくらいで、
今は部屋のクローゼットできっと充電も無くなった状態で眠っているだろう。



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