LOVEPAIN⑥
「篤さん。
タバコの前に、私の話を聞いて貰ってもいいですか?」


「ああ…」


篤は再び、床に腰を下ろした。



私は床に置いていた、その紙袋を篤に渡した。


篤はそれを手に持つ。


「チョコレートなんですけど。
事前に甘い物が嫌いだと聞いていたので、
実際に食べなくてはいいのですけど。
受け取って下さい」


「ああ…。
別に食うのは食うけど」


チョコレートの入ったその袋から、
私に視線を向けた。


「私、篤さんの事…。
あの…その…なんていうか…その」


あれだけ覚悟していたのに、
いざとなったら、その好きだという言葉が言えない。


自分の顔が真っ赤になっているのも感じて、
さらに私はドキドキとして、
言葉が出て来ない。


「あの、篤さん、その…えっと。
篤さん…」


「お前はもう黙ってろ。
後は、俺から言わせろ」

篤は私の膝の上で固く握りしめている両手を、紙袋を持っていない右手で、包み込むように握ってくれた。


その手は、私の手と同じように、
緊張からか震えていた。

< 466 / 501 >

この作品をシェア

pagetop