LOVEPAIN⑥
「謝罪はいらない。
篤、お前はなんでこんな事をしたんだ?」


白々しくそう言う成瀬に、
私は全てをぶちまけてしまいたくなる。


冷静に、冷静に、と自分に言い聞かせる。


「俺、こいつと付き合ってます」


篤のその言葉に、数人居た事務所の社員達が、こちらに注目した事が分かった。


これで、篤はもうこの会社にはいられないだろう。


私達の関係を、こんな風に公に知られて。



「なるほどな。
てめぇの女が仕事とはいえ、目の前で他の男にヤられるってなったら、
そりゃあそいつらぶん殴りたくもなるか」


言葉は共感しているけど、その成瀬の口調は怒気を含んだまま。


「はい。
責任取って、俺は辞めます」


「お前のクビだけで責任取れんのか?
今回撮影が中止になった事に、うちがその分の掛かった費用は負担する事になると思う」


「それは、自分が責任持って払います。
俺の貯金だけで足りなくても、どっかから借りて…」


「待って!それは私が払う!
篤は私のせいであんな事をしたのだから」


今の私ならば、ある程度ならばそのお金を払えるくらいの蓄えはある。


「うっせぇ。
てめぇは口出すな!
俺が払うって言ってんだろ!」


篤はそう言って私に怒鳴ると、
成瀬に再び頭を下げた。


< 490 / 501 >

この作品をシェア

pagetop