LOVEPAIN⑥
「ま、俺としてはどっちがその金を払おうがどうでもいいけど。
その辺りは、また追って篤にでも連絡するか」


成瀬は、篤から私に視線を向けた。



「で、お前はどうすんだよ?

こないだも撮影中に倒れたり」


「倒れたって、どういう事だ?」


成瀬の言葉に、篤は驚いたように私を見た。


私は篤に、病気の事を隠していた。


薬も、自分の部屋で隠れて飲んでいた。


「その病気の事もそうだけど、
今回のこれ?
んで、お前は現場でのスタッフへの態度は最悪。
ハッキリ言って、お前みたいに問題の多いAV女優は、いらねぇんだけど」


思わず怯んでしまうくらいに、
成瀬は私を強く睨み付けている。



「じゃあ、辞めます!
私ももうAVなんか辞めますよ!」


私がそう言うと、成瀬はその固い表情を崩し、
ホッとしたように息を吐いた。


その顔を見て、成瀬の企みに気付いた。


私と篤を辞めさせる為に、わざと…。


「とりあえず、篤は今日付けでクビだ。
広子、お前は辞めるのにあたって、後日また連絡する」


「…分かりました」


私は、成瀬に頭を下げた。


それは、謝罪ではなくて、感謝からなのかもしれない。


< 491 / 501 >

この作品をシェア

pagetop