レモンキャンディーにさようならを
犬の散歩に来ているおじいさんがいるだけで、他には誰もいない。



河川敷に設置されているベンチに腰掛ける。





誰かと何でもないことで笑い合って、生き生きと同じ時間を過ごしてみたい。


そう夢見ていた。




その誰かは、古賀先生がいい。



古賀先生と一緒に笑って、楽しく過ごしたい。



「先生……」


今すぐにでも会いに来てよ。





制服の胸ポケットの中。

宝物のレモンキャンディーを取り出す。


しばらく見つめて、包み紙をペリペリとめくった。



半年以上もずっと持っていたもんね。

キャンディーが溶けたり固まったりしたのかな。

私の宝物はやっぱりねっとりとしていて、でも泣きたくなるくらいに美しい色をしている。


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