レモンキャンディーにさようならを
先生は慌てるわけでもなく、穏やかな口調で春からのことを説明していた。


ぼんやりと思う。




あぁ、本当のことなんだなぁって。


全部夢だったらいいのになぁって。












帰りのホームルームも終わって。

今日は部活も無いから私は、ひとりで下校する。

図書室には、行けなかった。






外に出ると、吐く息が白い。
まだ寒いなぁ。



この寒さがずっと続けばいいのに。


春なんて、来なければいいのに。





胸ポケットの中からレモンキャンディーがこつんと私の胸を打つ。


「そんなこと考えちゃ、ダメだよね……」

立ち止まってぽつりと呟いた言葉が、白く濁って空へと消えていく。






そのまま帰る気にもならなくて。

私は河川敷にやって来た。


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