レイン。序章
見渡す限り、連なる砂丘のほかは何もない。

メルは相変わらず泣いている。

俺は頭がぼうっとしてきた。

視界がぼんやりする。

足も重い。

膝が折れそうだ。

それに眠い。

「お兄ちゃん、だいじょうぶ?」

メルが心配そうに言った。

俺は答えなかった。

剣が重たい。






地平線のあたりに、なにかの明かりが見えた。

遠目だが行列のようだ。

メルが俺の手を強く握ってくる。

俺も握り返した。

俺はメルを背にして、短剣を構えた。

前を睨みつける。

左目が痛んだ。

行列は、駱駝に乗った遊牧民の一行だった。人々はみな、黒い髭を生やして、アラブ人らしい白い民族衣装を身につけていた。

人の乗っていない駱駝には、中身がぎっしり詰まった麻袋がいくつも積まれている。

先頭の男が、松明を掲げて俺たちを照らした。
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