レイン。序章
盗賊を見かけてから数日が経った。

俺とメルは、集落にある家畜小屋で、牛の乳を搾っていた。

メルは初めてやるらしく、乳が飛び出すたびに歓声をあげた。

バケツに3杯ぶん貯まったので、そろそろ倉庫に入れに行こうとして、二人でバケツを持って小屋を出ようとしたときだった。

聞き覚えのあるしわがれ声がした。

「お兄ちゃん?」

しっ、と俺は人差し指を立てた。

メルにバケツを見張らせて、俺は小屋からおそるおそる外を覗いた。

先日の商人と、一年前の盗賊の一人だった。

まぎれもない、俺の左目を潰した張本人だった。
< 31 / 62 >

この作品をシェア

pagetop