ツキミチカフェにようこそ
バイトを終えての帰り道。程よい倦怠感に包まれて夜道を歩く。
各駅停車で駅四つ分乗り、最寄り駅の一つ前で降りた。疲れてはいるけれども、なんだか歩きたい気分だった。家までは歩いて二十分。川沿いの道をゆっくり帰ろう。
春の夜風は少し冷たい。葉桜がざわざわと音を立てる。散り名残の桜が舞う。ボクは空を見上げた。小さな星が瞬いている。月の光がないことに気づき、改めて今日が新月だと思い出す。
杏に電話しようか。
ポケットの中のスマートホンに躊躇いながら触れては、離す。この時間ならまだ起きているはずだ。まだ怒ってるだろうか、それとも……。
不意にポケットの中のスマートホンが震えた。慌てて引っ張り出して画面を見る。杏からのメッセージだった。
『電話して』
その一言がボクに気持ちを決めさせた。履歴から電話番号を呼び出し、かける。1コール、2コール……。
「義くん?」
3コール目で杏が出た。
「うん」
「今どこ」
「バイトの帰り」
「そっか」
会話が続かなかった。お互いに、謝るきっかけを探しているのが手に取るようにわかる。ボクは空を仰いだ。
「今日、ごめん」
「うん……いいよ」
思い切って言った一言を、杏も短い言葉で返事した。それだけでボクらの間の不穏な空気はなくなって、なんだかやっと、一息つけた。
「あ、ねえ」
「なに?」
「今日さ、新月なんだって」
「うん、知ってるよ。義くんもやっと月の満ち欠けに興味持つようになった?」
「うん、それがさ……」
夜道を歩きながら杏に話す、新しいバイト先のこと。次の満月を待たずして、新月の願いが叶ったことに、感謝した。
第一章「新月のPower wish」ー了ー
各駅停車で駅四つ分乗り、最寄り駅の一つ前で降りた。疲れてはいるけれども、なんだか歩きたい気分だった。家までは歩いて二十分。川沿いの道をゆっくり帰ろう。
春の夜風は少し冷たい。葉桜がざわざわと音を立てる。散り名残の桜が舞う。ボクは空を見上げた。小さな星が瞬いている。月の光がないことに気づき、改めて今日が新月だと思い出す。
杏に電話しようか。
ポケットの中のスマートホンに躊躇いながら触れては、離す。この時間ならまだ起きているはずだ。まだ怒ってるだろうか、それとも……。
不意にポケットの中のスマートホンが震えた。慌てて引っ張り出して画面を見る。杏からのメッセージだった。
『電話して』
その一言がボクに気持ちを決めさせた。履歴から電話番号を呼び出し、かける。1コール、2コール……。
「義くん?」
3コール目で杏が出た。
「うん」
「今どこ」
「バイトの帰り」
「そっか」
会話が続かなかった。お互いに、謝るきっかけを探しているのが手に取るようにわかる。ボクは空を仰いだ。
「今日、ごめん」
「うん……いいよ」
思い切って言った一言を、杏も短い言葉で返事した。それだけでボクらの間の不穏な空気はなくなって、なんだかやっと、一息つけた。
「あ、ねえ」
「なに?」
「今日さ、新月なんだって」
「うん、知ってるよ。義くんもやっと月の満ち欠けに興味持つようになった?」
「うん、それがさ……」
夜道を歩きながら杏に話す、新しいバイト先のこと。次の満月を待たずして、新月の願いが叶ったことに、感謝した。
第一章「新月のPower wish」ー了ー