諦 念

▪▪明奈②side


栞那が入院した時に
栞那のお父さんである実さんと
初めてあった。

その時は、ダンディーなおじ様
としか思ってなかったが

娘、栞那を、思う気持ちや
優しさ。その中で
仕事がら、中々、栞那のそばにいれない
もどかしさに苦悩している
姿をそばで見てきて·····

実さんの事が、頭から離れなくなっていた。

だが、やはり、私には栞那が
大切だったから
栞那に寄り添う日々が過ぎていく。

栞那が落ち着き始めた時に
栞那には、相談をした。
最初、栞那は、びっくりしていた。

それは、そうだよね。
20才以上も年の差があるのだから。

まして、実さんに
相手にもされていない

だから、バレンタインデーに
チョコをあげたいと話した。

栞那は、微笑んで
「明奈の思うようにして。
私は、明奈は見る目があると
思っているよ。」
と、言ってくれて
「玉砕したら、慰めてね。
ダメでも友達でいてよ。」
と、伝えると
「当たり前じゃない。」
と、言ってくれて
チョコを一緒に作る事にした。

チョコを作ってから
実さんがいるかな、と思える時間に
栞那の実家に行く。

急な来客に栞那の父・実さんは、
びっくりしていたが
「明奈ちゃん、どうしたの?」と。
「上がって」
の、言葉に上がると
実さんは、珈琲を出してくれた。
「すみません。ゆっくりされていたのに。」
と、言うと
「大丈夫だよ。」
と、優しげに笑う実さんに
私は、勇気を振り絞って······

チョコを鞄から出して
「わっ、私は、実さんが好きです。」
と、言ってチョコを差し出した。

実さんは、びっくりした顔をしたが
「ありがとう。こんなおじさんに。」
「おじさんだと思っていません。」
「う~ん。そう。
だけど、明奈ちゃんは、若いし
とっても可愛い。
こんな年寄りより
素敵な人が現れるよ。」
と、言われた。

わかっていた。
相手にもされないと·····
だけど
ふるなら、きちんと振って欲しい。
だから·····
「そんな遠回しな言い方を
していただかなくても大丈夫です。
相手にもされないのは
わかっていましたから
無理なら無理。
恋愛対象にならないなら、ならない
と、はっきり言って下さい。」
と、伝える私の目には涙がたまる
泣いては、ダメ。
かわいそうなんて思われたくない。

実さんは、そんな私を見て
はっと、した顔をして
手を伸ばして来たから
私は、その手から一歩下がる。

実さんの困った顔を見て
力が抜けてしまい
「忘れて下さい。」
と、言って
玄関から外にでた。

「明奈ちゃん!!」
と、実さんの呼ぶ声がしたが
振り向く事も、立ち止まる事も
できなかった。

親友のお父さんに
実さんにとって、ただ、ただ、
迷惑な······だけなのに

涙は、止まらずに
タクシーに乗り込み
駅まで行き
電車に乗り込む。

栞那には
《 玉砕 》
と、LINEした。
栞那からは、
《 来て 》
と、LINEを貰い
一緒にいて貰うことにした。
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