諦 念

▪▪(栞那)父・実①side


十川さんから
栞那との交際について
報告を受けた。

栞那が、男性を俺に紹介したのは
彼、十川さんが初めてだった。

聞けば、十川さんは、栞那の入社から
栞那に惚れていたと。
何······年も·····

どんな気持ちで
栞那を見守っていたのだろう。

完敗だ······

「十川さん、栞那の事を
宜しくお願いします。
あなたなら、栞那を任せられる。
だが、栞那を泣かせないで
下さい。
娘が傷つくことは、
二度とあって欲しくない。」
と、伝えると
「ありがとうございます。
私の命に誓って
栞那を悲しませるような事は
しません。
必ず、二人で幸せになります。」
と、十川さんは、俺の目を真っ直ぐに見て
答えてくれた。

最初から彼ならば·····と
思うが、これが流れなんだ···と。

栞那は、十川さんの横で
真っ赤になったり
涙ぐんだり
嬉しそうに笑ったり

栞那のこんな顔を見ることが
出きるなんて
本当に、あの時は思えなかった。

本当に、十川さんや明奈ちゃんには
感謝してもしきれない。

娘が苦しんでも
なにもしてやれない父親で
自分が情けなくて
たまらない。

「お父さんが、あの時から
ずっと、私や山本に
栞那を任せてくれたから
この日を迎える事ができました。
大切な大事な娘さんを
心配でたまらなかったと
思います。
私は、本当に感謝しています。
本当にありがとうございます。」
と、言ってくれる十川さんに
「ありがとう。
そんな風に言ってもらえる父親では
ない。職業柄、たった一人の娘にも
寂しい思いばかりの父親でね。」
と、言うと
「そんなことない。
お父さんは、かっこよくて優しくて
尊敬できるたった一人のお父さんだよ。」
と、言ってくれる栞那に
「ありがとう、ありがとう。
栞那は、何物にも代えられない
私の宝物だよ。」
と、改めて伝えた。

栞那は、嬉しそうに笑って
十川さんは、栞那の頭を撫でていた。

三人で食事を取り
「式場がとれ次第連絡をします。」
と、言う十川さんに
「楽しみにしています。」
と、言い
十川さんの御両親には、
明日挨拶に行くというから
「後日、私も挨拶をさせて下さい」
と、言うと
「是非、宜しくお願い致します。」
と、言われた。

三人で食後に珈琲を飲みながら
ゆっくりしている·····と

「お父さん、私はもう大丈夫だよ。
朝陽さんも、そばにいてくれるから。
だから、お父さんも
幸せなになって欲しい。
そうしてくれると
私も安心だから。」
と、言う栞那に
十川さんは、頭を傾げている。
「ありがとう。そうだね。
ずっと、保留にしてきたからなぁ。」
と、答えると
「ほんとだよ。
あんな綺麗で優しい子
中々、いないよ。
大事にしてね。
明奈は、私の大親友なんだから。」
「ああ、わかってるよ。」
と、お父さんと話してると
「えっ、ええっ、山本とお父さん?」
「うふふっ、そうなの。
二人とも、私を優先してくれていたの。」
「知らなかった。」
「言ってないし。」
「十川さんは、栞那でいっぱいだからね。」
と、言われて
「あっ、すみません。」
と、言う朝陽さんに父と二人笑った。
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