きっと100年先も残る恋
店員さんが来て、お酒の注文をする。

「まだ1年も経ってないんだよね」

雄介の方から言ってきた。

「なんかこんなタイミングで付き合ってしまって」

そう言ったところでドアが開いて店員さんがお酒を運んできた。

ちょっと笑ってしまう。

目の前にグラスが置かれる。
店員さんがサッと消えるように部屋から出ていった。

「まあ、いいや。誕生日おめでとう」

雄介のその言葉で乾杯した。

一口飲む。
実は初めてのお酒じゃない。

雄介もなんとなく分かってる気はするけど、2人で初めて飲むということが特別なんだと思う。

「こんなタイミングで付き合ってしまって?」

言葉の続きを促す。

「ああ」と思い出したかのように、雄介がグラスを置いた。

「なんか、ごめんねとありがとう」

そう言って笑う。

「今、過渡期だし、それに付き合わせてるようで結構・・・」

言葉に詰まらせる。
また店員さんが入ってきた。
1品目のホタテと鮪のカルパッチョを置いていく。

ドアが閉まったのを見て、また雄介と目が合う。

「なんか、俺に付き合わせて、・・・ありがとう」

雄介がそう言って笑った。

「私は、こんなに変わると思ってなかった」

そう言うと、雄介は少し驚いた顔をした。
ビールを一口飲んでテーブルに置く。

「だから正直、まだついていけてない」

そう言ってカルパッチョに箸を伸ばす。

一口食べて、心を落ち着かせて、雄介の方を見る。

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