空の色

窓からの景色

移植を決意したけども、あれから何ヶ月かすぎた。幸い薬の力でコントロール出来てるらしく、私は個室の病室の中だけの生活をしている。

ほぼベッドで寝たきりで、たまに気分転換で窓から空の景色を見てるだけ。


お兄ちゃんは、アメリカで重要な手術の時だけ帰るらしく、日本とアメリカを行き来している。

大輔はと言うと、論文やら学会で忙しいらしく、2週間に一回ほど、私の診察に来るだけになった。

瀬野先生は、昔の怖い瀬野先生に戻ってきて、数日に一回怒られる日々を過ごしてる。なんで、移植成功したら付き合うなんて言ってしまったのか、何回か後悔してしまったことも、、、笑とはいっても、毎日顔出してくれる瀬野先生が前よりも好きになっていることは確かだった。

コンコン...ガラガラ

瀬野先生「今日は調子どう?聴診しちゃおうか。」
そう言って首にかけてた聴診器を耳につけて、私の服をまくって聴診をはじめた。

長いまつ毛に、高い鼻。。。先生って綺麗な顔してるなー、、、って思ってたら、聴診が終わった。

瀬野先生「よし、大丈夫。」
そう言って、ニコッと笑った。
その顔を見て、私も少し笑った。

そして、瀬野先生は病室の椅子に腰掛けて、瀬野先生「今日調子よさそうだし、たまには、車椅子で少しお散歩する??」
と言ってきた。

なみ「え?いいの!!行くーーー!!ついでに売店でお菓子買っていい??」

瀬野先生「お菓子かぁ...まぁ少しだけな。」

この病院では、入院患者の手首にリストバンドがつけられていて、病気によってその色が変わる。赤のバンドをしてる人は食事制限があることから、1人で行っても売店では何も買えないのだ…。医師の許可があれば買えることになっている。
ちなみに私は赤と黄色のバンドがついてる。。。一つは心臓外科と書かれた赤いバンドもう一つは、呼吸器内科と書かれた黄色いバンドだ。。。

なみ「やったー!!何買おうかな何買おうかな〜」

瀬野先生「おいおい、そんなにはしゃぐな。発作出たら困る。」

なみ「はーい。。。」
少しほっぺたを膨らまして不機嫌な顔をした。

瀬野先生「10時ごろまた病室来るからそれまで大人しくしてろよ。」
といい、病室を出ていった。

まだあと1時間くらい時間があり暇だなぁ、、と思いながらタブレットで暇つぶしをしていた。

私はふと調べたくなったことがあった。

そう、、、それは、

「心臓移植後の生活」

検索画面に入力した。

そこに表示されたものは、、、
術後1週間に1回心筋生検を数回、、、その後も期間が延びるがかなりの回数行うと言うもの。。。そして、免疫製剤を一生死ぬまで飲まなくてはならないこと。生ものは基本的に食べられないこと、、、

それを見て、そこまで私は生きたいのかなと思ってしまった。
もし、ドナーが見つかっても、そんな考えの人に心臓が渡ったと思ったら親族の人は悲しくなるだろうな、、、と1人で考えてしまった。

そこへ、コンコン...
ガラガラ

看護師さん「おはよう!なみちゃん!気分はどう?今日は採血しなきゃだから、準備するね!」

と看護師さんが入ってきた。

なみ「やだ。しない」

看護師さん「先生に頼まれてるのよ。頑張ろ??」

私はもう治療したくなくて、かなり抵抗した。呼吸が乱れるほど泣きじゃくってしまった。

看護師さんが即座にナースコールで瀬野先生を呼んだ。

ガラガラ
瀬野先生「なみ!ちょっと落ち着こうか、これ打つから」
とかなりの力で押さえつけられた。
この前とは違く、かなり冷静な瀬野先生に私はすごく怖かったと同時に、少し懐かしさを感じた。

なみ「やめて!もう何もしないの!治療もしない。手術もしない!!」

瀬野先生「後で話ちゃんと聞くから、少し落ち着こうか」 
そう言って、私に呼吸をゆっくりするように指示してきた。胸の上で規則正しく一定のリズムでトントンされ私はだんだん目が重くなってきた。

そして、私は眠ってしまった。

瀬野先生「で、何があったんです??」

看護師さん「採血をしようと言ったら、しないと言われてしまって、そこから泣いてしまって、、、いつもはここまで嫌がらないのに、、、どうしてでしょうか、、、すみません。」

瀬野先生「うーん。、、(ん?タブレットで調べ物か?、、、)あー、、、これのせいか。ごめん。僕のせいだ。後でちゃんと説明するから、大丈夫。あ、採血もやっておくから、そこに置いておいて!」

看護師さんは病室から出ていった。

瀬野先生「ったく、、、1人で悩むなって言ってるだろう...」
そう言って眠っている、なみの頭を撫でて、右手から採血した。










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