蒼春
乃蒼side

手持ち花火はあと線香花火だけになった。

「誰が最後まで残るか勝負しようぜ。」

「どうせ蓮だろ?」

「いや、乃蒼が結構強くてな…。負け続けて気づけば17歳だよ。」

蓮の提案に乗ることにした。

『勝負しよう。』

「よし、今年は負けねえからな?」

そして4人の線香花火対決が始まった。

「ふーーーーー」

『こら、蓮!やめなさいよっ!』

私の線香花火にむかって息を吹きかけてズルをする蓮に徳島先輩の喝が入る。

早速、最初の脱落者が出る。

「うわぁ、落ちたー。」

蓮だ。

『本当に馬鹿なんだから…。あっ!』

「夏美もじゃん」

徳島先輩も脱落してしまい、一ノ瀬先輩との一騎打ちになる。

『乃蒼ちゃんがんばれー!』

徳島先輩が応援してくれる。

「蒼生、信じてるぞ。」

相変わらず、蓮は私に負けて欲しい様子。


そんな蓮の願いが叶ってか、私の線香花火は限界が近かった。

その時。

「あ、UFO。」

「『『え?』』」

一ノ瀬先輩に言われ、みんなで指をさした方を向く。

次の瞬間、私の手から線香花火が一旦離れ、また戻される。

一瞬の出来事にびっくりしていると、一ノ瀬先輩は人差し指を立てて

「しー。」

と合図をし、先輩の線香花火が落ちる。

こっちに向き直った蓮は、

「おい蒼生ー。何負けてんだよー。」

『おっ!乃蒼ちゃんの優勝でーす!』

そう言って花火は終わった。

『先輩…』

「おめでと。」


そのあと、徳島先輩と一ノ瀬先輩を駅まで送り届け、一日が終わった。
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