蒼春
『いえ、違います。』

「後輩ですよ…。もう…。」

『そうね、おばさんが邪魔しちゃ悪いわよね〜。』

「いや、だから…。」

朋子さんは嬉しそうに帰っていった。


再び2人の間に沈黙が流れる。

このままではいけないと思い、思い切って口を開いた。

『……たんです。』

「え?」

『いじめられたんです。部活で。』

私は少しずつ話し始めた。

『最初は、みんなとすごい仲がよかったんです。みんなで切磋琢磨して、頑張っていこうって。』

先輩は静かに話を聞いてくれる。

『だけど、私が1年生なのに選手に選ばれた時から…。』

……………………………………………………

サーブがネットに引っ掛かる度に

『ねえ、サーブちゃんと打ってくれない?点数落とすんだけど。』

と言われる。

ボールを拾えないと

『なにやってんの?ちゃんと取って。』

と怒られた。

先生に褒められたときには

『マジで調子乗んなよ。』

と言われた。


先輩たちも1年生が選ばれたのが気に入らなかったのか、注意の一つもしてくれなかった。

……………………………………………………

一ノ瀬先輩は静かに聞いてくれた。

『その後、県選に選ばれちゃったんです。そしたら先輩に呼び出されて、何で背が低いのに選ばれたのかって怒られちゃって…。』

今まで溜めていたものが、溢れ出てきて止まらない。

私の目から出た涙は、止まる気配がしなかった。
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