蒼春
一部始終を見ていた雪ちゃんがこんなことを言い出した。

『乃蒼ってさ、』

『う、うん。』

『もしかして一ノ瀬先輩とつき合ってるの?』

……え??急にどうしたのかな?

『え?』

思わず声に出してしまった。

『違うの?』

『ち、違うよー。そもそも私が先輩と付き合えるわけないじゃん。』

そうだ。私はただの男子バレーボール部マネージャー。そういう恋愛なんてしている暇なんかあるわけない。

…しかも一ノ瀬先輩が彼氏?絶対ありえない。

私なんか釣り合わない…。

『そっか、付き合ってないのかぁ。』

『うん。』

『えー、残念。付き合ってたらすっごい応援するのに。』

『あはは…。』

雪ちゃんには申し訳ないけど、マネージャーになったからと言ってイケメンと付き合えるわけじゃない。

しかも、先輩を恋愛対象として見ている女の子たちはいっぱいいる。

…そんなキラキラした子達に勝てるわけないよ。

『私は絶対2人付き合うと思うなぁ。』

???

『見てればわかるもん。乃蒼くらいじゃない?一ノ瀬先輩があんな顔見せるの。』

『そ、そうかな…』

『うん。』

『でも、徳島先輩にも。』

『それは違うでしょ。だってあの先輩は鈴木先輩の事好きじゃん。』

『……え?』

『え?……あ。』

一瞬何を話されたのかわからなかった。


え、徳島先輩が蓮のことを好き…?そんなこと一度も聞いたことがない。
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