蒼春
『…今の聞かなかったことにして。』

すごいことを暴露してしまった雪ちゃんは私から目を逸らして、頭を抱えて言った。

『多分無理かも…。』

『だよねー。やらかしたぁ。』

『何で雪ちゃん知ってるの?』

どうしても気になってしまい、聞かずにはいられなかった。

というか、なぜもっと早く教えてくれなかったのだ?!

『まー、もういっか。実はさ、駅で徳島先輩が誰かと電話してるの見てさ。』

『う、うん。』

『多分、他校の友達と話してたのかなぁ。いつ告白すればいいか分からないって言ってて…』

『え、誰に告白するの…?』

『私も気になっちゃってさ。ちょっと盗み聞きしてみたら、鈴木を好きになっちゃったかもって言ってたの。』

確かに徳島先輩が2年生で鈴木って呼んでる人は、兄だけだと聞いたことがある。

『そ、そっか。』

『乃蒼だから信じてるけど、誰にも言っちゃダメだよ?』

『うん!もちろん!』

…言えるわけがない。もし私が喋ってしまったら徳島先輩を傷つけてしまう。

そんな大暴露に気を取られていたら、クイズ大会は終わっていた。

やばい、楓の勇姿を見るの忘れちゃった…。

『うちのクラスどうなった?』

同じく聞いてなかった雪ちゃんが聞いてくる。

『私もわからない…』と分かりやすく首を横に振る。

そこに楓が戻って来てしまった。どうやって声を掛ければいいんだろう…。

『乃蒼!雪!』

楓は駆け寄って来て、私たちにある紙を見せてくれた。
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