婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「え? 仕事?」
「はい。なにか、ないでしょうか?掃除でも料理なんでもするので」

 オディーリアの「大切な相談事」を、姿勢を正して聞いていたクロエはがくりと脱力した。が、オディーリアはいたって大真面目だ。彼女にとっては、これが大切な相談事なのだ。

「え~。偉い人の側室ってのは、綺麗に着飾って寵を争うのがお仕事でしょ。ライバルの寝室に毒蛇を仕込んだり、子供を暗殺してみたり。あ、下働きの男との秘められた恋とかもあると盛り上がるよね! そういうの大好き!」

 それは、いつの時代の物語なんだろうか。クロエの趣味はよくわからないとオディーリアは思った。

「毒蛇を仕込むライバルも暗殺する子供も、この城にはいませんが……」
「あっ、そうだったわ。じゃ、オデちゃんが退屈しないようにレナート様に他にもたくさん妃を迎えるよう頼もうか? オデちゃんなら、どんな女がきても負けないよ!」
「いえ……寵を争いたいわけではないので……」
「え、そうなの? 私がオデちゃんくらい美人だったら、バリバリ争うけどな~気分良さそう!」

 彼女はハッシュの妹というより、マイトの妹といわれたほうが納得できるなとオディーリアは思った。いまいち話が通じない感じが、ふたりはよく似ている。
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