婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 強引に押し切られているような気がしないでもないが……でも、負傷した兵達が元気になるのは、オディーリアも嬉しかった。
 〈白い声〉を使わず、自分の手で世話をする喜びをこの場所で初めて知った。

「大体な、クロエを見ろ。あいつなんか、健康なほうの腕や脚をハサミで切りつけて散々苦情がきているがちっとも懲りてないぞ」
「クロエは立派です! 初めてきた戦場に愚痴もこぼさず、そもそも私の身勝手に付き合わされただけなのに……」

 レナートはふぅと小さくため息をもらす。

「お前は……人には優しいな。だが、自分にももう少し優しくしてやれ。オディーリアがかわいそうだ」

 彼の話は時々とても難しい。
自分に優しくする。その言葉の意味を彼女はしばし考えこんでしまった。

 真剣に思い悩んでいる彼女を、レナートはぎゅっと強く抱きしめる。

「な、なんでしょう」
「考え事は、俺のいないときにしろ」
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