ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
「俺が水野さんの事好きって言ったこと覚えてます?」

「お、覚えてない」

 俯いていた顔を松田の手によって上げられた。
 私はどうも松田の目が苦手だ。
いや、苦手というか眼鏡の奥にある真っ黒な瞳に吸い込まれそうになる。
 下から見上げる松田は耳まで真っ赤にし照れているのか少しはにかんで私を優しい目で見ている。

「水野さん、好きです」

「……ありがとう」

「付き合ってくれますか?」

「……それは……無理」

 年下の、しかも会社の後輩と付き合うなんてやっぱり考えられない。
 確かに松田のこの表情にはドキッとした。
でもそれはドキッとしただけで、好きという感情とは別物だと思う。
と言うより好きと言う感情が思い出せない。

「返事早……でも俺まだまだ諦めませんよ?」

「お好きにどうぞ……もう離してっ、んんっ……」

 まただ。
 一瞬で松田に唇を奪われた。
告白を断ったばかりの女にすることなのか!?
けどそのキスはけして力尽くではなく優しくそして激しく求られるように矛盾したキス。

「んんっ……」

 ゆっくりと松田の唇が離れていく。
 頭がぼーっとしているが少し唇がジンジンと痺れているのは明確に分かった。
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