ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
「じゃあ着いたから、また明日」

 一言別れの挨拶をし電車を降りる。
何故かまだ松田は私の隣にいた。

「え……ここの駅なの?」

「違いますよ、改札まで送ろうかなぁと」

「いや、いいから! 早く乗りなさい!」

「いいからいいからっ」

「ちょっと!!」

 スタスタと改札口まで歩き始める松田の後を急いで追う。
 なんだか終始松田のペースに巻き込まれている気がする。

「じゃあ水野さん、気をつけてくださいね」

「……ありがとう、じゃあまた明日」

「また明日」

 そう言いながら松田は私の頭を優しく撫でた。

「んなっ!! 帰る!!!!」

 ブンっと頭を振り松田の手を跳ね除け改札を出た。
 でもなんとなく気になって振り返ると松田はまだ同じ場所で立って私を見送っていた。
 それはそれはとても優しい顔で。
 その笑顔を振り切るように私は早歩きでアパートまで帰った。
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