ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
 先に部屋に入り目につくところはささっと片付けてから松田を招き入れる。「お邪魔します」とキチンと靴を揃えるところが更に好感度が上がる。

「麦茶でもいいかしら?」

「あ、ありがとうございます、実は喉がカラカラでした」

「凄い汗かいてたもんね」

「あっ、俺汗臭いですか!? すいませんっ、水野さん追いかけるのに走ってたから」

「大丈夫、全く臭くないわよ」

 私の事を追って汗だくになったと聞いて松田のことが愛おしいと思う気持ちがどんどん膨らむ。人を好きになるってこんなに優しい気持ちも持てるんだ……
 出した麦茶をゴクゴクと一気に飲み干す松田。相当喉が渇いてたんだろう。おかわりの麦茶を注ぎ「ちょっと着替えてくる」と私はリビングを出た。

 寝室に入りスーツを脱ぐ。この隣の部屋に松田がいると思うと着替える為に脱いでいるだけなのに無性に恥ずかしくなり急いでパーカーにデニムとゆるい私服に着替えた。

「お待たせ」

「水野さん、こっち来てください」

 松田は隣に来てと床をポンポン叩いてアピールしてくる。
 ……恥ずかしい。でもここで恥ずかしがってたら今までと何も変わらない気がして、ゆっくり松田の隣に腰を下ろした。肩が触れるか触れないかの距離を開けたが一瞬でそれは意味の無いものになり、松田に肩を抱かれピッタリくっついてしまっていた。
 心地よい。離れたくない。そう思い、素直にそのまま松田にもたれ掛かった。
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