ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
「真紀って呼んでいいですか?」

「あぁ、い、いいわよ、でも会社では絶対駄目よ」

 会社では呼ばないように釘を刺す。あくまでも上司と部下の関係は崩したくない。

「真紀」

 耳元で囁くように名前を呼ぶものだから松田の吐息が当たって背筋がゾクゾクする。自分でも分かるくらい多分今顔が真っ赤に染まっているだろう。

「真紀、好きだよ」

「っつ……」

「真紀」

 何度も何度も囁かれ私の耳も身体も心も限界だった。嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちとで混濁し身体の底から松田が好きという気持ちが溢れ出そうになる。でも好きと言うのが恥ずかしいと思う気持ちの方が勝ってしまい「私も好き」のたった一言が言えない。

「ありがとう」と言うのが今の私の精一杯の受け答え。

「じゃあそろそろ終電無くなるから帰りますね」

「あ、送って行くわよ」

「こんな夜中に女性を外に連れて行く訳ないでしょ? じゃあまた明日」

「ありがとう……じゃあまた」

「真紀」

 優しく触れる唇。好き。この触れ合っている唇からこの想いが通じればいいのに……

「おやすみなさい」

「……おやすみ」
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