ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
 会社のドアに手を伸ばす。
 このドアを開ければ多分九十パーセントの確率で松田がいるだろう。ニヤケそうになる顔をギュッと引き締めドアノブを回す。

「おはようございます……」

「あ、水野さん、おはようございます」

 いつも通りな松田に拍子抜けしそうになる。もしかしてこんなに意識しているのは私だけなのかもしれない。急に恥ずかしくなり松田から顔を逸らしてしまった。
 コツコツと松田が近づいてくる足音がする。

「水野さん」

「な、何かしら」

 チュッとわざと音を立て私の頬にキスをし「意識しすぎ、可愛い」と耳元で囁く。

「んなっ!!!」

「そんなんじゃバレちゃいますよ?」

 お前のせいだー! と叫びたくなったがグッと我慢をしフゥーと一息、平常心を保つ。

「仕事始めるわよ」

「はい」
< 97 / 232 >

この作品をシェア

pagetop