強面お巡りさんはギャルを愛しすぎている

 見惚れていたがすぐに意識を現状の問題へ引き戻した。修一郎さんはすでにスーツに着替えていて、食事も済ませているようだった。リビングの入口で突っ立っている私に気付き、「おはよう」と短く声を発した。それだけ私の胸は高鳴る。

「おはようございます。ご、ごめんなさい。寝坊してしまって……。何故かアラームが鳴らなかったみたいで」
「あぁ、俺が止めたんだ」
「え、なんで……」

 止めたってどういうこと? 驚きのあまりその場に呆然と立ち尽くした。
 修一郎さんはマグカップをローテーブルに置き、ジャケットと鞄を手に持ち私の横を通り過ぎる際に耳元で囁いた。

「昨日結構運動したから、疲れただろ」

 その低い声に昨日の夜の出来事が反芻し、背中がゾクゾクと震えた。昨日の熱が蘇ってくるようだ。

「そういえば、式場から連絡があったからメール転送しておいた。招待人数と映像とか流すなら写真を用意するようにって内容だった」
「わ、わかりました。メール見ておきます」

 私の頭に手を置き、「いってきます」と寝癖のついた髪を優しく梳かし仕事へ行ってしまった。
 夜、眠かっただろうに私を抱いてくれて、そのうえ体の心配もしてくれる。
 玄関が閉まると膝の力が抜け、床にへたり込んだ。

「うぅ……完璧すぎ。カッコいい」

 修一郎さんはよく私の頭を撫でる。できれば、撫でるだけじゃなくキスもして欲しい。噛み付くような理性を無くしたキスを……。
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