弓木くんはどうやらわたしが好きらしい



『気になってたんだけど……千隼くんって、いつから、わたしのことが好きなの?』

「……」



いつから……ね。

サッカー部の佐藤事件以来なわけだけど、素直に教えるのは癪にさわる。

だって、あれいつの話だよ。去年の頭だろ。



「このかはどうなの」

『へっ?』

「いつ俺のこと好きだって気づいたの」

『え……ええと、はっきり自覚したのは、誕生日のときかなぁ」

「へー」




最近じゃねーかよ。

やっぱ、俺の方が絶対重いな、と思う。




『ていうか、今千隼くんの話だってば! わたしも教えたんだから、千隼くんもちゃんと言ってよお……』

「内緒」




教えてやんねーよ、むかつくから。
俺より、このかの方がずっと上手なのが。



でも、せっかく捕まえたからには、もう絶対離してやらない。

いつか俺なしじゃ無理だってくらい、溺れて欲しがってほしい。




『ふふ、電話越しの千隼くんの声、なんかいいなぁ。好き!』

「……」



唐突な「好き」にダメージを食らっているうちは、まだ俺の方がぜんぜん弱い。


あーあ、たぶん、永遠に敵わない予感がするけど。


一生、俺の方が必死で追いかけてるんだろうけど。




『……すー……』




結局このかの課題が終わっても切るのが惜しくて、寝落ちするまでずっと電話を繋いで。

穏やかな寝息が聞こえてきて、ふ、と思わず笑ってしまった。



「おやすみ、このか」




いいよ、もう、なんでも。
一生振り回されててやるよ。


隣にいてくれるなら、それだけで本望だから。





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