もふもふ後宮幼女は冷徹帝の溺愛から逃げられない ~転生公主の崖っぷち救済絵巻~
 愛紗は大きなため息を吐き出す。まだ心臓が激しく脈打つのを感じ、何度も胸をさすった。
 
「姫さん、うまくいったようだな」
 
 近寄ってきた男はにやにやと頬を緩ませ、愛紗を抱き上げた。青き衣(ころも)をまとう男の名は十然(じゅうぜん)。愛紗の元で働く宦官(かんがん)だ。
 
 狐目でひょろりと背が高い。公主相手にあるまじき態度ではあったが、愛紗は気にしなかった。
 
「うう……本当は一生会わずに暮らすつもりだったのに……」
 
 愛紗は小さな手で頭を抱え、十然の腕の中で丸くなる。
 
 幼き身で身体を張って養父である皇帝――黎明に夜伽を申し入れたのには訳がある。
 
 それを説明するには、人間界の年月で五年、仙界(せんかい)の年月にして五日ほど遡らないといけない。
 

 
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