俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
誰もいないのをいいことに、私はトイレの前でしゃがみ込み、大きくため息をついてた。
すると、頭上からクスクスと笑い声が聞こえてくる。
(えっ……)
「ははは、うちの会社にヤンキーがいたなんてな。ぜひとも新しい発想を聞かせてもらいところだ」
聞き覚えのある低い声に勢いよく顔を上げると、藤堂快が肩を震わせ笑っていた。
「しゃ、社長……も、もも申し訳ありません! お見苦しい姿をお見せしてしまって」
勢いよくその場に立ち上がり、深々とお辞儀をする。
(ああ、こんな行儀悪い姿を見られるなんて、印象が悪すぎる……! 私、落ちるんじゃないの⁉)
「まぁいいが。君、さっき試験受けてた子だよな。大分前に終わってるはずだけど、どうかしたのか?」
「そっ、それはですね……」
(変に言い訳しても、もっと印象が悪くなるだけだし正直に答えよう)
顔面蒼白のまま、私はなんとか口を開く。
「とても大切にしていたハンカチがなくなってしまって。会社の中で落としてしまったことは確実なのですが、全然見つからないんです」
「……なるほど。それを血眼になって探したせいで、君はそんなにボロボロな姿になってしまったということか」
「……っ⁉」
藤堂快は私の脚のつま先から頭のてっぺんまでを、興味深そうになぞるように眺める。
そこでようやく、私は自分の姿が乱れに乱れていたことに気づいた。
シャツのボタンが上から三つ目まではだけ、ストッキングはふくらはぎから太ももにかけ綺麗な一本線が入ってしまっている。
さらに時間をかけ綺麗に整えた一つ縛りの髪は、ほどけて左右あちこちにアンテナを張っている始末だ。
(恥ずかしすぎて、死んでしまいたい……)